シャバーサナは好きですか?
シャバーサナはヨガのレッスンの最後におこなうことが多いですが、私自身、インストラクターになる前に通っていたグループレッスンでは、そわそわしてあまり落ち着けなかったイメージがあります。
シャバーサナとは?
「屍のポーズ」とも呼ばれるシャバーサナ。多くはヨガレッスンの最後に、5〜15分程度おこなわれます。
また、究極のリラックスとしても取り入れられ、疲れをとる事で知られる「ヨガニドラ」はシャバーサナの姿勢で瞑想をおこないます。
ただ仰向けになって、寝転がり、足は腰幅からマット幅に広げ、つま先は外へ向ける。
腕は体の横に伸ばして手のひらは上にむけ、脇には少し空間を開けて、肩も首も全身脱力するポーズ。
この効果は、副交感神経の活性化による、血圧や心拍数の低下、ストレスの緩和、続けることで、睡眠の改善、抑うつ症状の軽減などがあります。
交感神経優位で、ストレスの多い現代人にとって、とても魅力的な効果がたくさんのシャバーサナですが、急に「やってみて」と言われても、心からリラックスすることは難しいと感じる時もあるかもしれません。
「主動筋」と「拮抗筋」
シャバーサナでしっかりとリラックスするためには、シャバーサナ自体の練習も有効ですが、体を動かすことでもアプローチできます。
ここから少し、解剖学のお話も入れていきます。
私たちが意識して動かすことのできる骨格筋は、脳からの指令により筋繊維の方向に収縮することで、関節を動かしたり、姿勢を保持したりしています。
曲げた腕を伸ばすためには、伸ばす筋肉が収縮する必要があります。
このように、身体を動かすにあたって、私たちの身体には2つの対になる作用を持つ筋肉が存在します。
例えば腕を曲げる動作をするとき、収縮しているのは上腕二頭筋肉、いわゆる「力こぶ」になる筋肉です。
逆に弛緩している<のは上腕三頭筋、いわゆる二の腕の筋肉です。 ある動作に対して、収縮している筋肉(腕を曲げる時の上腕二頭筋)を「主動筋」、緩んでいる筋肉(腕を曲げる時の上腕三頭筋)を「拮抗筋」と呼びます。
ある動作に対して出される脳からの指令は、収縮のみで、筋肉が緩む(弛緩)ための指令は存在しません。
ですが、主動筋を収縮させることで、同時に拮抗筋が緩むようになっています。
この仕組みをうまく利用することで、余計な緊張を解いたシャバーサナのためのレッスンをおこなうことができます。
解剖学的に考えるシャバーサナのためのレッスン
ヨガのポーズの多くは、どこかの筋肉を収縮させることで吸う呼吸を行い、そのアーサナをキープします。
呼吸ができる範囲で、しっかりと筋肉を収縮させることで、対になる筋肉は緩みやすくなります。
三日月のポーズで、前腿が硬くて伸びにくい場合は、三日月のポーズの前に、バッタのポーズなど、ハムストリングを収縮させるポーズを取り入れることでも、前腿が緩みやすくなります。
強度の高いポーズや、バランスポーズなども、多くの筋肉を収縮させるため、その分緩みも感じやすくなります。
筋肉を緩める指令は出ないからこそ、ストレッチをしたい場合でも、伸ばす筋肉ではなく、対の筋肉を収縮させるイメージをリードすることで、より伸ばしたい筋肉が伸びやすくなります。
例えばウッターナアーサナでは、ハムストリングを伸ばそうとするよりも、前腿を縮めた、坐骨を天井に向けようとするようなリードをおこなうことで、力を入れる場所が明確になり、より伸びを感じやすくなります。
これらをうまく組み合わせたレッスンを組み立てることで、最後のシャバーサナでは、しっかりと脱力し、リラックスできる状態に持っていきやすくなります。
身体の仕組みを理解してレッスンを組み立てよう!
とはいえ、仰向けが辛いなどの理由により、どこか緊張が抜けない場合もあるかもしれません。
そんな場合は、膝下にサポートを入れたり、膝を立てたりして腰への負担を軽減したり、クッション等を使いながら、横向きになっても大丈夫です。
また、1度ぎゅっと筋肉を収縮させてから、吐く息とともに脱力することも、筋肉を緩めるために効果的です。
シャバーサナにより得られる効果は、自律神経を整え、生活の質をも変化させられる可能性のあるものです。
ぜひ、レッスン後のスッキリ感を味わっていただけるようなクラスにできるといいですね。
様々な身体の仕組みを理解し、心地いいシャバーサナを取れるよう、レッスンを組み立ててみてください。