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皆さんは前世や輪廻転生を信じますか。
ヨガを練習していても、輪廻はちょっと分からないという人は多いと思います。
インドの伝統では輪廻を信じます。
どうして輪廻があるのか、それが私たちの人生にどう関わるのか、ヨガ哲学的な考え方をご紹介します。
どうして輪廻が起こるのだろう
生まれ変わりの仕組みを理解するためには、カルマとサンスカーラというものを知る必要があります。
最初からカタカナで難しい言葉が出てきますが、仕組みはとてもシンプルです。
輪廻の原因カルマとサンスカーラ
ヨガ哲学で使われるカルマとは「行為」という意味があります。
私たちが行うこと全てはカルマです。
カルマを漢字にすると「業」になります。
自業自得という熟語で考えると分かりやすいですね。自分自身の行為(業)が自分の得となって帰ってきます。
ヨガ哲学では、どんな物事にも必ず原因があり、偶然はないと考えます。
棚からぼた餅はないのですね。
棚からぼた餅が降ってきたとしても、それは誰かが棚に餅を置いたからであり、棚の近くで動いて振動が起きたから、と言うと、夢も希望もないですが、どんなことにもその原因となった行為があり、それをカルマと呼びます。
原因となる行為の後に即結果が訪れれば分かり易いのですが、原因と結果の間に時差があったり、想像と違う形で結果が現れたりすることがあります。
例えば、今晩楽しくお酒を飲むとします。
その時は楽しくて幸せですが、翌日になって顔が浮腫んでいたり、二日酔いで頭が痛くなったりします。
普通は自覚があるので、頭痛の原因がお酒だと分かりますが、初めて予備知識なしにお酒を飲んだ人には理解できないかもしれません。
行為と結果には時差が起こり得ます。
もうすでに原因となる行為が行われたけれど、結果が現れていない時、結果の種が撒かれてしまった状態ですが、その種の状態のことをサンスカーラ(潜在印象)と呼びます。
例えば、今日お金が足りなくて、友達の財布から1万円盗んでしまったとします。
友達は私が盗んだと気が付きませんでした。しかし、私自身には盗んだという記憶が残ります。
「お金を盗んだ」という悪いカルマは、サンスカーラとなって残り、いつか悪い結果を招きます。
もしかしたら、友人本人にはバレないかもしれません。
しかし、車に当て逃げされるなど、全く違うところから悪いことが起きることもあります。
こんな時は「バチが当たった」と言いますが、まさにそれはカルマの仕組みにのっとっているのですね。
サンスカーラが原因で輪廻が起きる
行為の結果は、いつ与えられるか分かりません。
私たちは生きている限り常に行為を生み出し続けています。
行為の結果がすぐに与えられることもあれば、結果を受け取る前に臨終の時を迎えてしまうこともあります。
では、結果の原因となるサンスカーラ(潜在印象)が残った状態で死んでしまったらどうなるのでしょうか。
サンスカーラは結果となるまで残り続けてしまいます。
そのため、魂が肉体から離れても、サンスカーラが結果として現れようとします。それが原因で人は生まれ変わってしまいます。
例えば、人を沢山騙して搾取していた人が、富を貯めて寿命まで生きたらラッキーと思いますが、悪いサンスカーラが沢山残ってしまうと、生まれ変わった時に搾取される側の不幸な境遇に生まれてしまうと考えられています。
逆に、良い行いをしたのに、良い結果を受け取れなかった人は、幸福な家庭に生まれ変わると信じられています。
あらゆる事には理由があり、今与えられた境遇にも必ず理由があると信じられています。
ヨガに出会った人は、前世でもヨガを求めていた
インドでは「今ヨガを練習している人は、前世でもヨガをしていた」と耳にすることが多いです。
実は、教典『バガヴァッド・ギーター』にも書かれています。
ヨーガで成就せず人生を終えたものは、高潔なものの世界に住み、長い年月そこに住んだあと、地球上の清浄で反映した家庭に生まれ変わる。もしくは、叡智のある(ヨーギンの)家庭に生まれ変わる。このような出生はこの世界でとても得難いものである。(6章41節42節)
特に古代のインドでは、きっとヨガの先生を探すことも大変でした。
インターネットもない時代に、ヨガの先生をどのように探していたのでしょうか。
または、ヨガを練習したいと望んでいても、家庭での仕事が忙しくて、ヨガなんてできない人も多かったことでしょう。
「ヨガを学んで、本当の自分を探究したい」と願っていたのに、それが叶わなかった人たちには、ヨガを求める強い願いがサンスカーラ(潜在印象)として残ります。
カルマというのは、体の行動だけではありません。
心の行為も、サンスカーラを生み出すのですね。
ヨガを求める強い気持ちがすぐに叶わなくても、必ず結果として返ってきます。
その結果、恵まれた余裕のある環境に生まれてきたり、そもそもヨガの聖者の子供として生まれきたりすると考えられています。
日本や、インド以外の国で生まれてきた私たちは「ヨガに出会うために生まれた」なんて思いもしないでしょう。
しかし、実はインドの平均的な家庭に生まれるよりも、日本の方が質の高いヨガの先生に出会えるチャンスが高いかもしれません。
または、自分の趣味としてヨガを行うことができる自由や余裕も、多くのインド人女性より与えられているかもしれません。
だからこそインドでは、外国人であっても、ヨガを行っている人は前世でもヨガを学んでいたのだと考えます。
来世を待たなくても良い。今日の自分が未来を作る
前世の自分の行動で運命が決まってしまっていると考えると、希望がなく聞こえてしまうかもしれません。
しかし、ヨガは今の自分が幸せになれない言い訳を考えるためのものではありません。
ヨガでは過去を変えることができませんが、未来を変えることができます。
教典『ヨガ・スートラ』では「ヨガで取り除くのは、まだ現れていない未来の苦である」と定義しています。
今この瞬間に与えられた自分の境遇は、過去の自分が作り出したものです。それを変えることはできません。
例えば、今までの不摂生で肥満になり、糖尿病と診断したら、今から後悔しても事実を変えることはできません。
しかし、今日の自分が覚悟を決めたことで、この瞬間からの自分の行動を変えることができます。
食事や運動といった習慣を変えることは簡単ではありませんが、自分で決意することで、これからの人生を病気と付き合いながらでも健康的に生きることは可能です。
今は、古代インドに比べて時代の流れが早いです。それは、私たち個人の人生でも同じです。
「ヨガをもっと深めたいけど、今は子育てが忙しくて」という人であっても、今の時代であれば、来世を待つ必要はありません。
今は難しくても、数年後には願いが叶う可能性は大きいです。
ヨガでは、熱意の強さが成功への速度だと考えます。
強く願った人は、その分早く叶います。
そのタイミングは自分で決めることができないかもしれませんが、自分の願いと行動によって、自分の未来を築けるというのは、ヨガ哲学の大きな希望ですね。
カルマのしくみを理解することが人生のコツ
今回は、カルマ、サンスカーラ、輪廻といった、かなり宗教色の強い言葉が沢山出て来ました。
このような言葉には、苦手意識の強い人も多いかもしれません。
輪廻転生自体を信じるか、信じないかは人によって違って良いと思います。
しかし、カルマ(行為)、サンスカーラ(潜在印象)、カルマの結果の関係性を理解することは、今の私たちの人生に大切なことです。
今日の自分の行動が、私たちの未来を作り上げます。
それを意識することで、自分の人生にしっかりと向き合って、どのように生きるべきかを見直すことができると思います。