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皆さんは、自分が練習しているヨガの起源について考えたことはありますか。
“ヨガ4,500年の歴史”のような言葉を聞いたことはあるでしょうか。
ヨガは古代インドから引き継がれているものですが、いったいどれくらい古いのでしょうか。
今回は、ヨガの歴史についてご紹介します。
ヨガの歴史は4,500年前のインダス文明から
ヨガがいつから行われていたのかは、正確には分かっていません。
それでも、現代では4,500年前と言われることが多いのですが、それはインダス文明の遺跡からの推測です。
インダス文明といえば世界の4大文明の1つとして知られ、特にモヘンジョダロやハラッパーという遺跡群が有名です。
そんな遺跡の中から、パシュパティ(獣の王)と呼ばれるモチーフ(印章)が発掘されています。
パシュパティは、現在のシヴァ神の1つの姿だと言われています。獣に囲まれて、パドマ・アーサナ(蓮華座)のような姿で座っています。
どうやらこれが、瞑想をしている修行者の姿に見えるため、ヨガはインダス文明の時代にはすでにあったとい言われています。
また、インダス文明の遺跡からは、沢山の女性像も出てきます。これは、シャクティであると言われています。
シャクティは、ハタヨガにおいて重要な女神ですが、古代文明から源流を辿れるのは興味深いですね。
インド神話上のヨガの始まり
一般的にはヨガの起源をインダス文明に辿りますが、伝承ではシヴァ神が最初のヨガ修行者だと考えられています。
それはハタヨガの教典の中にも書かれています。
何万年も昔から、シヴァ神はヨガの瞑想を行ってきました。
インドでは、神々でも瞑想を行います。最初のヨガ修行者であるシヴァ神は、ヨガの教えを神妃であるシャクティ(別名パールバティ女神)に伝えました。
シャクティ女神によって、ヨガの教えは人間の聖者たちに伝えられ、その教えが現代まで続いていると信じられています。
何万年というと、とても信憑性が低く感じますが、実は踊るシヴァ神の姿(ナタラージャ)は、紀元前9,000年前頃の石器時代の洞窟に見られます。
摩訶不思議な国インドなので、本当に古代人たちはシヴァ神に会っていたのかもしれないですね。
ヨガという言葉が登場する聖典ヴェーダとウパニシャッド
ヨガの起源はインダス文明だろうと言われていますが、その時代にはヨガという言葉は多分ありませんでした。
というのも、インダス文明の言語は今でも解明されていないからです。
ヨガという言葉の発祥はもう少し先になります。
紀元前1,500年前頃に、ヨーロッパ系のアーリア人がインドに侵略してきたと言われています。
彼らは、現在のカースト制度の元となる職業身分制度を作りました。そのトップにいるのが、バラモンと呼ばれる司祭階級です。
そして、インドで最も古い『ヴェーダ』と呼ばれる聖典が生まれました。
ヴェーダは、神から与えられた言葉を言い伝える聖典です。
その中で Yuj(ユジュ)という単語が登場します。
ヴェーダの中では修行法としてのヨガという意味はまだなく、馬などの家畜を繋ぐ道具を意味しており、そこから「繋ぐ」という意味に変容していきました。
さらに、神の言葉であるヴェーダ聖典の言葉を哲学的に説明する『ウパニシャッド』という教典が発生します。
ウパニシャッドは正式なもので108つあると言われていますが、初期のウパニシャッドからヨガという言葉が登場し、現在私たちが行なっているヨガ(瞑想)の意味で使われています。
ウパニシャッドで登場するヨガ(瞑想)は、真実を見つけるために行う修行です。
自分自身の本質をウパニシャッドではアートマン(個我)と呼びますが、アートマンを見つけるためには、感覚を制御し、物質世界への意識を断ち、自分の内側に向かって瞑想をする必要があります。
ヨガの教典ヨガ・スートラに定義される8支則
ウパニシャッドは哲学の教典なので詳細なヨガの方法については説かれていませんが、5世紀ごろに編纂された『ヨガ・スートラ』によってヨガの教えが明確になりました。
ヨガ・スートラは現代でのヨガの教典として最も権威があるものです。
ヨガ・スートラのヨガでは、心をコントロールする方法を具体的に説きます。
心を制御して、完全に心の働きが止まったときに、本来の自分であるプルシャ(真我)の状態に到達できるのだと説きます。
実践では、8支則と呼ばれる方法を説いています。
- ヤマ(制戒):社会的な禁止事項
- ニヤマ(内制):自分に対する制御
- アーサナ(座法):安定した座り方
- プラーナヤーマ(調気法):呼吸でプラーナ(気)をコントロール
- プラティヤーハーラ(制感):外界から受ける感覚を断つ。
- ダーラナ(凝念):意識を一点に集中。
- ディヤーナ(静慮):ダーラナで一点だった対象を広げる。深い瞑想
- サマーディ(三昧):自我を忘却した状態。
この8つの実践を、階段を登るように歩んでいくことで、ヨガの目的に到達することができます。
瞑想以外もヨガとしたバガヴァッド・ギーター
ヨガを勉強している人が手にする教典に『バガヴァッド・ギーター』があります。
こちらは、ウパニシャッドと同様にヴェーダーンタ学派の教典です。
バガヴァッド・ギーターの中では「○○ヨガ」と名前の付いた様々な教えが登場します。
通常ヨガは、瞑想を行うことを主流としていますが、ここでは瞑想以外の方法が説かれています。
バガヴァッド・ギーターには主に4つのヨガが書かれています。
カルマ・ヨガ(行為のヨガ)
自分自身に与えられた全ての役割り(ダルマ)をヨガとして遂行する。
行動の結果への執着を手放すことで、エゴを捨て、真実に近づく。
ジニャーナ・ヨガ(知識のヨガ)
宇宙や自分自身の本質とは何かを学ぶことで、真理に到達する。
バクティ・ヨガ(信愛のヨガ)
神への純粋な信愛によってエゴを手放し、自分自身も純粋な状態になる。
ラージャ・ヨガ(瞑想のヨガ)
瞑想を行うことで真理と一体になる。
全く違う4つの道が説かれていますが、全て真理に到達することを目指しています。
どのような道を歩んでも平等に尊いのだと教えてくれます。
ハタヨガが:現代ヨガの始まり
ヨガ・スートラのヨガは現代でも引き継がれていますが、決して易しいものではありませんでした。
当時のヨガは、主に瞑想によって実践されます。
8支則にはアーサナ(体位法)も含まれていますが、主に瞑想をするときの座り方を意味しており、現代のような多様なポーズもありませんでした。
とにかく座って心を制御しろという方法では上手くいかなくてヤキモキしてしまう人も多かったのでしょう。
時代が進むにつれて、さらに実践しやすいヨガが好まれるようになりました。
それがハタヨガです。
ハタヨガは、様々なアーサナ(体位法)やプラーナーヤーマ(呼吸法)について説かれます。
身体・呼吸・心の3つは繋がっているため、身体や呼吸をコントロールすることが、心の制御に繋がると考えます。
実際に身体を動かす方法は分かり易く、また、心だけでなく身体的な健康も向上してメリットが得られやすいことから、現代でも世界中で広まっています。
ヨガは多様化しているけれど目的は1つ
今回は4,500年と言われるヨガの歴史の中で、特に大切なポイントをご紹介しました。
現在世界中で広まっているヨガは、ここでご紹介したヨガ・スートラ、バガヴァッド・ギーター、ハタヨガといったものを軸として、様々な発展を遂げたものです。
皆さんの行っているヨガに繋がる歴史は見つかったでしょうか。
ヨガの起源を辿ることによって、より深くヨガへの理解が深まりますね、