健康の維持・向上、心の安定、美容など、さまざまな目的でヨガをされている方がいらっしゃるかと思いますが、海外ではすでに医療の補助や代替ケアとしても注目されています。
文献検索サイトに「Yoga」と入力してみると、2023年12月末までで約8,000件の報告がされていて、科学的な視点からもヨガの効果が確認されつつあります。
今回は2019年に報告された、生命のかなめとも言える、心臓や血管機能に対するヨガの効果についての研究を紹介します。
研究の背景: 補完代替医療として注目されるヨガ
がん、糖尿病、慢性塞栓性肺疾患を含む、生活習慣を起因とした心臓や血管の循環器に関連する疾患は、合わせると世界中でも死因の50%を占めています。
心臓血管疾患の危険因子には、喫煙、高脂肪食、運動不足のほか、ストレスやうつ病などの心理的要因が挙げられます。
心臓血管疾患の治療で用いられる薬は有効性がありながらも副作用もあるため、QOL を上げて病気の再発を予防する目的に、健康的なライフスタイルに改善したりストレスマネジメントに意識を向けたりする患者も増えてきました。
ヨガは身体的な運動・呼吸法・瞑想・および幸福感にもつながる哲学的側面を持ち合わせ、ストレスマネジメントと運動の両方を伴うことから、患者からの人気が高い補完代替医療の1つです。
特にここ最近では、ヨガによる治療・療法的な側面が、精神疾患・心臓血管疾患・代謝性疾患などの幅広い側面から注目がされており、研究も盛んに行われています。
ヨガによって精神面や生理学的な面でのバランスが改善されることにより、心臓血管疾患を含むさまざまな病気の改善が期待されます。
この研究では、過去に数多く行われてきた心臓血管疾患に対するヨガの研究と得られた効果をレビューしてまとめることを目的としました。
研究の方法:ヨガと心臓血管を含む研究報告レビュー
文献検索サイトを用いて2015年2月までの関連する研究報告をレビューしました。
検索キーワードは以下のとおりです。
- ヨガ
- 心臓血管(Cardiovascular)
一次的に205の研究報告が検出され、その中から今回の研究テーマに合わせて149の研究報告に絞り込みしました。
ヨガと心臓血管の健康に関する研究報告は1961年以降増加傾向にあり、1990年代には17件に増え、さらには2010年代には研究報告の総数が110件を超えました。最も多いと、1年間に20件を超える報告がされる年もあります。
件数の劇的な増加からも、心臓血管の健康に対するヨガの貢献が大きく注目されていることが分かります。
国別にはアメリカからの報告が38%、インドが29%を占めていますが、続いてイギリス、オーストラリア、カナダなどから報告があり、世界中でヨガに対する期待が高まっていることが見られます。
研究の結果・結論:ヨガに期待できる病気の予防と QOL 向上
それぞれの研究報告には、健康な成人の場合、高血圧や糖尿病・心不全等の疾病を抱える人が含まれる場合など、対象者は様々です。
また、試験期間も8週間から56週間と大きな幅がありました。最も多いのは12週間のヨガの実施による研究です。
ヨガの内容については、最も多いパターンはアーサナとプラーナヤーマの組み合わせによるもの、いくつかの報告には瞑想が含まれる場合もありました。
統計的に最も精度が高いとされるランダム化比較試験による研究報告は149件のうち19%のみで、多くの研究は短期間の単一の検証による報告でした。
心臓血管疾病を抱える方に対するヨガの効果の大規模の調査は不足しているため現時点においてはエビデンスに欠けますが、これまでに報告された以下のような研究結果から、病気の予防または患者のQOL向上の観点からもヨガが役立つ可能性に大きく期待がされます。
- 交感神経を抑制し副交感神経の活動を促す、自律神経系に働きかける
- リラクセーションを促すヨガによって心臓の過剰な働きを鎮め心拍数を下げる
ヨガは様々な病気を予防する目的にも、また病気からの快復や QOL 向上の目的にも、幅広い面から世界中の多くの方に実践されているようです。
生命のかなめとも言える心臓・血管に対する検証も含め、その効果が研究報告としても劇的に増加してきていることから、ヨガの注目度はかなり高く可能性に期待が寄せられていることが分かってきました。
内容や強度をそれぞれの人が選択しながら、老若男女どんな方にも行うことができるのがヨガの長所。
病気の方は医師の指示に従う必要がありますが、自分の身体から発せられる声をよく聞きつつ、心地よい伸びや深呼吸から始めてみるのはどうでしょうか。