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ヨガを勉強し始めるとクンダリニーという言葉を耳にすることが多いのですが、なんだか分かりにくいですよね。
クンダリニーと呼ばれる言葉は、インドでもタントラという密教で使われるため、摩訶不思議なものとして知られています。
クンダリニーとはどのようなものなのか、基礎を押さえておくと面白いかもしれません。
体の中に宿るクンダリニーとは
クンダリニーは、ハタヨガで頻繁に使う言葉です。
ハタヨガは身体を使って自分を磨くヨガで、クンダリニーも人の体の中に宿っていると考えられています。
ハタヨガでは、私たちの身体を物質だけでないと考えます。
手で触れることのできる物質だけでなく、身体を動かすエネルギーがあり、そのエネルギーによって人間の活動が行われていると信じられています。
体内を流れるエネルギーをプラーナ(気)と呼びます。
クンダリニーもエネルギー的なものなので、手で触れることも、目で見ることもできません。
しかし、ハタヨガによって内側への感覚が鋭くなることによって、少しずつ感じられるようになります。
蛇のような姿で眠る潜在能力
どうして私たちは日常でクンダリニーを感じることができないのでしょうか。
私たちの内側への意識が弱いこともありますが、さらに、クンダリニーが眠った状態にあるから感じにくいです。
かの至高なる女神(クンダリニー)は、かの無病なる梵の座処(ブラフマ・ランドラ)に行くべき道の入り口を顔面でもってふさいで眠っている。(ハタヨガ・プラディーピカ3/105)
ハタヨガの教典はとても象徴的な言葉を使うので、分かりにくいですね。
クンダリニーは、体内のエネルギーでありながら、通常は眠っています。そのため、潜在エネルギーとして知られています。
日常生活の中の物質的な活動を行っているときには眠った状態にいますが、スピリチュアルな能力を発揮するときにはクンダリニーを起こす必要があります。
ブラフマ・ランドラに行く道というのもとても分かりにくいですね。
ブラフマ・ランドラというのは人の頭頂にある、シヴァ神の座る場所だと言われています。
ブラフマ・ランドラにエネルギーを流すためには、背骨状にまっすぐに伸びるスシュムナー気道を通らなくてはいけません。
しかし、スシュムナー気道はとても狭い道なので、様々な不純物が詰まっていると、エネルギーを流すことができません。
クンダリニーは、スシュムナーの1番低い入り口に眠っています。
クンダリニーはとぐろを巻いていて、蛇のようだと言いはやされている。このシャクティを動き出させたものは解脱者となること疑いなし。(ハタヨガ・プラディーピカ3/107)
ハタヨガの練習によってクンダリニーの目が覚めると、まるで蛇のように頭の部分が上方に伸びていきます。
すると、スシュムナーの中をクンダリニーが通り、中に詰まった不純生を破壊していきます。
クンダリニーがスシュムナー内の詰まりを破壊していくことで、細いスシュムナーの中をエネルギーが自由に流れるようになります。
スシュムナー上には7つのチャクラがあり、スシュムナーにプラーナ(気)が流れることでチャクラも活性化していきます。
すると、今まで眠っていた潜在能力も発揮されるようになります。
そして、クンダリニーが頭頂のシヴァ神の座まで到達すると、宇宙のエネルギーと繋がれるようになると言われています。
ハタヨガでは、このクンダリニーを起こすために様々な技法を使います。
いくつかの方法をご紹介します。
クンダリニーを呼び起こすヨガのテクニック
クンダリニーの覚醒には様々な技法が用いられます。
また、複数の技法を組み合わせたムドラーも多数あります。
眠ったエネルギーを目覚めさせるためには強度の強い練習が行われるため危険性があると考えられます。
古代インドでは必ず師の指導からの直接指導が行われ、時間をかけて練習されてきました。
体内のエネルギーは、体の状態とも強く繋がっています。
特に、呼吸はエネルギーの流れに直接的に影響を与えるため、息を使った練習法はハタヨガでとても重要視されています。
クンダリニーを呼び覚ますバストリカー
ハタヨガでは、呼吸を使った調気法であるプラーナーヤーマを行いますが、その中でも最も力強いものがバストリカーです。
バストリカーは力を込めてふいごを踏むように、激しく呼吸をすることで体内に熱を生み、溜まった不純生を破壊します。
この調気法は、すみやかにクンダリニーをよびさまして、気道を清掃し、快感を与え、カラダによい結果をもたらす。スシュムナー気道の入り口をふさぐ粘液等の障害物をとりのぞく。(ハタヨガ・プラディーピカ2/66)
力強い呼吸によって一気に気が体内を循環していくことによって、エネルギーが流れる体内の気道の汚れが破壊されていきます。
また、高まったエネルギーの圧力によって、クンダリニーが強く刺激されて目を覚まします。
私たちの心と身体に溜まった、ドロドロとした粘液質は全て取り除かれ、とても爽快な感覚を得ることができます。
行者はヴァジラ坐を組んで坐し、クンダリニーを動き出させた後、直ちにバストリカー調気法をなして、クンダリニーをすみやかに目覚めさすべき。(ハタヨガ・プラディーピカ3/114)
ここで書かれているヴァジラ・アーサナは、パドマ・アーサナ(蓮華座)を意味しているのではないかと言われています。
(一般的にはヴァジラ・アーサナは日本でいう正座を意味しています。)
バストリカーを行い、その後、腹部のバンダ(締め付け)を行うことで、クンダリニーが動き、死の恐れさえ破壊していくとされています。
ハタヨガは秘密の教え
ここまでの話で、何を言っているのか全く分からないと感じる方も多いのではないかと思います。
本来クンダリニーの覚醒は、インドの人里離れた場所で秘密に伝えられてきたものであり、簡単に理解できなくて当たり前のものです。
この行法は、宝石箱のように大事にしまっておかなければならない。また、良家の婦女との不義のように、誰にも話してはならない。(ハタヨガ・プラディーピカ3/9)
古代インドでヨガの教えが世間に公のものにして来なかったのは、自分たちだけの秘密にして独占欲を満たすためでも、優越感を感じるためでもありません。
クンダリニーの覚醒は強烈なものであり、間違った方法で無理やり覚醒させると、危険なものだということが認識されていたからです。
ヨガの技法は正しい方法でゆっくりと時間をかけて深めていくべきものであり、興味本位で手を出したり、得られた力を間違った方法で使ったりするのは良くないと思われていたのだと思います。
ヨガの練習で自然に活性化していくクンダリニー
ヨガを練習している人にとっても、あまり身近でないクンダリニーですが、無意識に活性化していくことは多々あります。
クンダリニーの覚醒には、アーサナやプラーナーヤーマで体内の不純生を燃やしていくこと、バンダ(体内の締め付け)による刺激が必要ですが、それらはヨガの練習を行なっていくと自然に到達されます。
ヨガを行なっていると、自然とエネルギーの上昇を感じることや、直感力の高まりを感じる人がいると思いますが、その時にクンダリニーが動き始めているかもしれません。
ちょっと不思議な経験をすることもあるかもしれませんが、ヨガで得られた体験をポジティブに楽しみながら、自分のヨガを高めていきたいですね。