雲立ち込める岩場の間の海で座って瞑想する人のシルエット

世界を作り出す5つの元素(パンチャ・マハヴータ)で自分を知る

ヨガでは、私たちが住んでいる世界は5つの元素(空・風・火・水・地)によって作られていると考えます。様々な特徴を持ったあらゆるものはこれら5つのあらゆる組み合わせによって生まれます、外の世界だけでなく、私たちの内側もまた5つの元素によって作られています。そのためヨガでは、自分自身を知るために5つの元素を理解することが重要です。

まずは基本の5つを知ろう

5つの元素(空・風・火・水・地)のイメージグラフィック

「5つの元素」をサンスクリット語で、「パンチャ・マハヴータ」と呼びます。パンチャは「5」マハーは「偉大な」、そしてヴータは「元素」という意味です。
世界を作る元素が、言葉通り5つであることは古代ウパニシャッド時代から記されています。

このブラフマー(梵神)、インドラ(帝釈神)、プラジャーパティ(生主神)、これら一切の神、地風空水火などの五粗大元素、これらの微生物に混在すると思われる種子、卵生、胎生、湿生、芽生など各種の生物、馬、牛、人、象その他全ての息するもの、地をかける獣、空を飛ぶ鳥、動かない草木、これらは総じて叡智を眼目とし、叡智に基づいている。

(アーイタレーヤ・ウパニシャッド5・(3)

5つの元素とは以下の通りです。

  • Akash(アーカーシュ):空
  • Vayu(ヴァーユ):風
  • Tejas(テジャス):火
  • Jala(ジャラ):水
  • Prithivi(プリティヴィ) :地

これらは、それぞれが関係し合っています。
ヨガではこの5つを正しく理解することで、自分自身と世界を正しく理解できると考えます。

5元素 メディア永井記事

空間(アーカーシュ)

世界と人体の中には、自由に動き回るためのスペースがあります。それがアーカーシュ(空)です。
例えば、食事をしたら食道を通って胃に食べ物が運ばれます。思考は、頭がいっぱいな時には何も生まれず、余裕がある時には様々な考えが浮かびます。このように全てのものは、空の内側に生まれ包まれています。
空は全てを包み込むものであり、軽く、微細な特徴があります。また空間は音を生み出しますが、それは触ることも見ることもできないため聴覚のみと関連します。

眉間の奥の神秘的な空間チダカーシャへの瞑想で深い自分に出会う

風(ヴァーユ)

ヴァーユは酸素や窒素を含んだ空気を表すものではなく、動きを司っています。ヨガの練習では、プラーナーヤーマ(調気法)でヴァーユの働きを使うので、呼吸だけでなく体内の様々なエネルギーの動きに敏感になることができます。
ヴァーユは軽く、動きがあり、乾燥する特徴があります。また肌で感じることができ、音を生み出すことができるので、、触覚と聴覚の2つの感覚器官に関わります。

ヴァーユは、体内では以下の5つのプラーナとして働きます。

  • アパーナ:ヘソから下。排泄、生殖、月経などに関する
  • サマーナ:ヘソから心臓まで。心臓や消火器、循環器を活性にする
  • プラーナ:横隔膜の上部。呼吸、発生器、喉など
  • ウダーナ:喉から頭頂。目、耳、鼻。吐く、話すなど
  • ヴィヤーナ:体全体に行きわたる。他の4つの働きを助ける。筋肉、神経、血液

エネルギーのバランスを整える、体内の5つのプラーナ

火(テジャス)

火の元素は、テジャス、またはアグニと呼ばれます。火には「生を与えるもの/生を奪うもの」という2つの側面があり、軽く、熱く、鋭く、乾燥しています。
そして、世界を動かすあらゆるエネルギーを司っています。特にアーユルヴェーダやヨガでは、体内の「消化の火」を重要視します。「消化の火」は腹部にあり胃腸と関わるため、ヨガのアーサナでは積極的に腹部を刺激し、炎を燃やします。

また炎は体内の不純生を燃やすものです。未消化で体内に残った食べ物は腐敗して毒素を生み出します。それは食べ物だけでなく、感情でも同じことです。消化しきれない思いは、いつまでもドロドロと感情を汚します。
それらを焼き切って消してくれるのが体内の火です。

火は音(聴覚)・触覚・色(視覚)という3つの感覚を生み出します。

【太陽と火】ヨガで実践!自然からエネルギーを受け取り使う

水(ジャラ)

水はジャラ、またはアパスと呼ばれ、冷たく、重く、流動的な特徴があります。
パンを作る時、小麦粉だけではまとまりませんが、水を足すことによって粘液質となり生地が出来上がるように、モノとモノを結合する力もあります。

また、砂漠を歩いている時や非常に喉が渇いた時などに飲む水の味は、とても甘く美味しく感じると言います。
このように、水は音(聴覚)・触覚・色(視覚)・味(味覚)という4つの感覚器官に関わります。

地(プリティヴィ)

プリティヴィは大地、土を表します。
硬く、重たく、粗雑な性質を持っています。また、音(聴覚)・触覚・色(視覚)・味覚・香(嗅覚)という5つの感覚全てで感じることができます。
特に雨季には、湿った土の香りを特に感じやすいですね。

アーカーシュ(空)が全てを包み込むのに対し、プリティヴィ(地)は全てを支える土台です。
大地が整っていないと世界は均衡が取れません。植物を育てる時には土壌を育てることから始めないといけませんよね。世界も自分自身も、土台が安定していることが最も大切です。

5つの元素と私たちの身体

世界に存在するあらゆるものはパンチャ・マハヴータ(5つの元素)によって作られています。もちろん私たち自身の身体も同じです。

アーユルヴェーダでは、身体の器官とマハヴータを紐付けて考えます。

  • 空:体内の空間(口腔、鼻腔、食道、胃など)
  • 風:伝達器官(神経、筋肉など)
  • 火:消化、代謝など変換(胃、腸、肝臓など)
  • 水:体液(消化液、血液、精液など)
  • 土:構成(骨格、歯、爪、靭帯など)

またまたヨガでは、それぞれの特性の働きを5つのチャクラが司っていると考えます。

  • 空:ヴィシュダ・チャクラ
  • 風:アナーハタ・チャクラ
  • 火:マニプーラ・チャクラ
  • 水:スヴァディシュターナ・チャクラ
  • 土:ムーラダーラ・チャクラ

チャクラは、体内の特定の場所に存在しています。ヨガでは7つのチャクラについて勉強することが多いのですが、マハヴータは物質的なものであるため、重たく、下から5つのチャクラのみに存在します。
上の2つのチャクラ(アージニャーとサハスラーラ)は、知性や宇宙意識と紐付いています。

トリグナ/トリドーシャとマハヴータ

トリグナ(ヴァータ・ピッタ・カパ)をイメージさせるグラフィック

ヨガやアーユルヴェーダで使う分類に、グナやドーシャと呼ばれるものがあります。
これらとマハヴータの関係も見てみましょう。

ドーシャとは、インドの健康学であるアーユルヴェーダで頻繁に使用する言葉です。
私たちの心身には「ヴァータ(風)」「ピッタ(火)」「カパ(水)」という3つの属性があり、それら3つの組み合わせの割合によって個性が生まれます。3つのドーシャの割合は、その人が生まれた時にすでに決まっており、自分が生まれ持ったバランスに合わせて生活することで健康を維持することができます。

では、マハヴータの5つの元素はどの属性に当てはまるのでしょうか。

  • 空:ヴァータ
  • 風:ヴァータ
  • 火:ピッタ
  • 水:カパ
  • 土:カパ

重たく粘液質な土と水はカパ(水)、火はピッタ(火)、乾燥や軽さといった特徴の風と空はヴァータ(風)。分かりやすいですね。

アーユルヴェーダ入門:「ドーシャ」って何?

また、サーンキャ哲学で使うグナ(性質)もマハヴータと関係します。

  • 空:サットヴァ
  • 風:ラジャス
  • 火:ラジャス
  • 水:タマス
  • 土:タマス

限りなく透明で軽い空はサットヴァ(純質)です。動きや刺激のある風と火はラジャス(激質)。重たく、不透明な水と土はタマス(鈍質)です。

世界を作り出す3つのグナ:サットバ・ラジャス・タマスを知ろう

マハヴータを意識して練習してみよう

私たちが生活する自然界には5つの元素全てが必要だ、ということは感じていただけたと思います。どれか一つが欠けても世界は成り立ちません。

それは、私たち自身も同じです。5つ全てのマハヴータを感じながら、ヨガの練習を行ってみましょう。

自分の内側にあるスペース(アーカーシュ)、呼吸(ヴァーユ)、内側から生まれる熱(テジャス)、血液の流れ(ジャラ)、力強く安定したアーサナ(プリティヴィ)。
自分に与えられた全てを感じて味わい、楽しむことができるとヨガの喜びも満ち溢れてくるのではないでしょうか。

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