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睡眠不足大国、日本
日本人の睡眠時間は、平均よりも1時間も少なくワースト1――
2021年、38ヶ国の先進国が加盟する国際機関OECDが発表した統計によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で加盟33カ国の最下位という結果になりました。日本人が「睡眠不足大国」と言われる所以、なんとアメリカは日本より平均1時間半も長いという結果となりました。
こんにちは、ヨガジェネレーションのなおこです。
今回のテーマは、睡眠。
みなさんは、良い睡眠をとれていますか?
最近では、睡眠不足・睡眠の質の低下が、健康はもちろん経済損失につながることへの理解も深まり、ITやAI技術を用いて睡眠の分析・改善へと導くアプリ・端末・寝具などのスリープテックとよばれる商品・サービスも増えてきているのを実感します。
では、私たちが日々実践しているヨガで、睡眠のためにできることはないのでしょうか。
実は脳科学の観点から、睡眠の時間と質をしっかりと確保し、よりよい睡眠を得るために、ヨガでできることがほぼ解明されてきているといいます。
「睡眠×ヨガ」の可能性――今回はそんなお話です。
隠れ不眠になってない?「よく眠れない」にもカタチがある
ここで日々の睡眠を振り返ってみましょう。
他の国と比べると睡眠時間が短いと言われたとしても、これまでもこれくらいの睡眠時間で生きてきたしおよそこんなものなのではないか…?と、眠りに対してあまり課題を感じない方も多いかもしれません。
前提として、睡眠時間の確保と一概に言っても必要な睡眠時間は年齢によっても異なるとされていますが、仮にそれぞれの睡眠時間が確保できていたとしてもその”質”が良いものでない場合には眠りに満足感が得られなかったり、疲労感を翌日まで引きずってしまう、そんなケースも多くみられます。
さらに、一見睡眠に対して大きな悩みを自覚していなくても、このような体験をされたことはないでしょうか。
・心配事が頭をちらついて、寝付けなかった
・変な夢を見てしまってうなされて眠りが浅くなった
身に覚えがあったり、当たり前になってしまって特に問題視していなかった、という方も多いかもしれません。
“よく眠れない”、と一言に言っても、そのカタチは様々。
不眠症という自覚はないけれど、快眠できているともいえない。そんな隠れ不眠の方にとっては、まだよりよい睡眠に対してできることが残っていると言えそうです。
充分な睡眠時間を確保できること。それと同時に、その眠りを高い質を保ち、体も心も休めるものとすること。その双方が本当の意味での睡眠不足解消につながるのかもしれません。
そして、ここで注目したいのが先述した「入眠」と「夢」というキーワード。
寝つきをよくしてスムーズに就寝することは睡眠時間の増加に、そして夢にうなされることなく眠ることができれば睡眠時間の質の向上に結び付くはずです。
そしてそんな方にこそ贈りたい、今日から始められる睡眠時間の増加と質の向上につながるポイントについて、脳科学の世界的権威・有田秀穂先生とレジェンドヨガティーチャー・マック久美子先生のお二人にお話を伺いました。
脳科学の世界的権威・有田秀穂先生に聞く「ヨガニードラ」がよりよい睡眠に有効な2つの理由
今回、脳科学の視点から睡眠とヨガの関係について教えてくださるのは、脳科学の分野における世界的権威・有田秀穂先生。
サンスクリット語で”眠り”を意味するnidra、そのヨガ的手法「ヨガニードラ」は主に2つの理由から睡眠に対して効果があると言えると、有田先生は言います。
入眠を促す
入眠とは、いわゆる”寝つき”のこと。
仕事、家庭、人間関係…忙しい一日を終える頃には、たくさんのストレスが頭=心を刺激していることも多いはず。
ここ20年くらい、比較的新しい研究の成果によって、脳内物質のひとつであり、通称愛情ホルモンともよばれるオキシトシンに脳内でのストレス中枢の鎮静化・ストレスホルモン低下といった効果が認められることが、ほぼサイエンスで明らかになってきているそう。
ヨガニードラのプログラムの中のひとつであるボディスキャン。
インストラクションを通して脳の中の運動野・感覚野に意識を巡らせることは、昂った神経をおだやかに鎮め、快眠への入口をスムーズに開いてくれることにつながるといえます。
夢のメカニズムと思考のリリース
夢というのは、ランダムに、そして急に現れるので結構やっかいなのです。
見たくないイメージが一晩の間に何回かでてきて、脳の中にだんだん固定されてしまう。
そう有田先生は言います。
主にレム睡眠の最中に見るとされる夢。なんでこのタイミングでこんな夢を見るんだろう…?と不思議に思ったことのある方も多いはず。
夢の内容や登場人物…なんの脈絡もなさそうに見えて、有田先生によると、私たちの不安・緊張・怒り…などといったネガティブな潜在意識・情動記憶が関係していることが多いそうなのです。
そこで有効と考えられるのが、ヨガニードラの中でおこなわれるビジュアライゼーション。無意識下で繰り広げられるこうした記憶や意識の回路を、整理し、切り離し、書き換えていくことにつながるという驚きの効果があると考えられています。
一度眠りに落ちた後、どれだけ穏やかな眠りが続けられるかどうかは、睡眠の質を高める上で非常に重要なポイントとなるはず。夢の正体ともいえる潜在意識を顕在化してゆくようなこの過程は、睡眠の質を向上させるのに一役も二役もかってくれることでしょう。
イシュタヨガ第一人者・マック久美子先生に聞く「ヨガニードラ」9つのステップとその効果
ヨガニードラに”寝たままでおこなう”ヨガというイメージが強い方も多いはず。
イシュタヨガ第一人者・マック久美子先生によると、伝統的なヨガニードラのステップは、アーサナ・ボディスキャン・視覚化・ビジュアライゼーション・サンカルパなど全部で9段階にも及びます。
「ヨガニードラは、気づきを丁寧に自分の内側に向け、徐々にほんわかした力を生み出す力があるテクニック。誰にマッサージされたわけでもないのに、終わるころには本当に体の力が抜け、本当にリラックスした状態になる」、とマック久美子先生は言います。
一日を終えようとする夜、なかなか思ったように鎮まらない頭や心をおだやかなものにしてくれるのにもぴったりのヨガのプラクティスなのだと伝わってきます。
人というのは案外ネガティブな気持ちを受け入れて処理をするのが苦手なので、心や頭に残っているものが多いのです。(ヨガニードラのステップでは)そうした残っているものを呼び起こして、切り取っていきます。
ヨガニードラのステップが、もう必要のない考えや思いに気づき切り離すことで、よりシンプルで淀みのない頭や心の状態へと促され、良質な睡眠への土台作りにつながるのかもしれません。
有田秀穂先生とマック久美子先生のスペシャルコラボ講座、開催!
今回お話をお聞かせくださった、脳生理学者・有田秀穂先生と、イシュタヨガ第一人者・マック久美子先生。こちらのお二人による超豪華!スペシャルコラボ講座、「医学博士から学ぶ「睡眠×ヨガ」ヨガニードラを脳科学で紐解く集中講座」が今年9月に追加開催決定!
脳科学のスペシャリストである有田秀穂先生からは睡眠の基礎知識、入眠や夢との関係に基づくヨガニードラの脳科学的解説などを座学で学び、マック久美子先生による9段階のヨガニードラを受けることができます。
頭が疲れてしまって、よく眠れないという方にもおすすめです。ヨガニードラの効果に、きっとびっくりすると思いますよ。
今回、アサナから始まる伝統的なヨガニードラ9ステップ全てをさせていただける点も、とても楽しみです。
今回ご紹介した、睡眠とヨガニードラの関係をはじめとする興味深いお話は、講座のほんの一部。実際の4時間の講座では、睡眠を脳科学的に理解できる基礎知識・ヨガニードラの脳科学的解説、脳内物質との関連などたくさんの座学による知識と、それらを体感しながら落とし込んでいけるよう9段階で深める贅沢なヨガニードラ実践の時間がセットになっています。
潜在意識や記憶の整理といった、自分をを構成する深い部分にもテーマが及んでいく学び・体験は、まさに目から鱗の連続です。
スリープテックをはじめとする”物”に頼らず、自分自身の内側で引き起こされる癒しとクリアリング。脳科学的に紐解くことでみえてくる、ヨガニードラがもつこうした働きは、現代人がよりよく眠るための切り札としての大きな可能性を感じます。
この体験をきっかけにコツコツと日々にその学びを取り入れていくことは、真の快眠習慣へつながっていくはずです。また、ヨガの指導者の方においてもヨガニードラのことを脳科学的に理解できる貴重な機会。
一生の間、眠りを生活に取り入れながら生きていく私たちにとってのまさに一生ものの学び。ぜひご自身のため、そして身のまわりの方へ伝えるために、深めてみてくださいね!