自然の中で胸に手を当てて目を閉じて立つ女性

どうしてヨガをすると心が軽くなるのか〜ヨガ的な心のしくみ〜

ヨガを練習した多くの人が、心が軽くなる経験をします。

「精神的な苦痛を取り除きたくてヨガを始めた」という目標を持っていなくても、肩こりが辛くてアーサナ(ポーズ)のクラスに参加しただけであったとしても、どちらも同じように心が軽くなる経験をします。それは、ヨガによってアハンカーラ(自我意識)と呼ばれる概念が弱まってくるからです。

今回は、ヨガで心が軽くなるしくみについて、ヨガ哲学の視点から説明します。

心が重たくなる原因は心の壁

窓辺のベッドに腰掛けて俯く女性の背中

みなさんは、どんな時に心が憂鬱だと感じたりストレスフルだと感じますか?仕事に行く時に気持ちが重たいと感じる人も、多いのではないでしょうか。

私たちは、生活をするために働かなくてはいけません。しかし、家から一歩出ると多くの敵がいるかもしれませんし、何らかのトラブルに巻き込まれるかもしれません。外に出て働くことは戦さに出るような気持ちになり、安心できる自宅でゆったり休みたいと感じる人も多いでしょう。

しかし、本来安心できる場所であるはずの自宅が、結婚後は戦場になってしまう人もいるかもしれません。そのような人は、自宅以外に自分が安心できて心が休まる場所を見つけなくてはいけませんね。

心が休まる場所と休まらない場所の違いは、何なのでしょうか?それは、自分自身が攻撃されるかもしれない、自分が傷つけられるかもしれないという恐怖や不安感の有無が関係しています。もしくは自分が何かミスをして、今まで築いてきた自分への信頼と評価に傷がつくのが怖い場合も考えられますね。これらは全て、自分が傷つけられる恐怖心です。この苦しみを取り除くのが、ヨガです。「私」を守らないといけないと思うほど、世界が危険で苦しいものになります。そうならないために、ヨガではエゴを手放すことが大切なのです。

ヨガではエゴを手放すことで楽になる

夕焼けが反射する海辺で手に掬った砂を落とす人の手元

ヨガでは「エゴを捨てる」という表現を頻繁に使います。エゴはヨガの言葉で、アハンカーラ(自我意識)と呼びます。ヨガを練習することで、エゴまたはアハンカーラが自然と取り除かれていきます。

ヨガのクラスに来て出会う先生は、当然ながら敵ではありません。最初こそ緊張するかもしれませんが、自分自身の時間を預けることができる先生の前では、壁を作る必要はありませんね。

ヨガのクラスを共有すると、先生は必ず生徒さんの状態を感じることができます。新しく参加した生徒や色々な先生のクラスを受けている人の中には、先生の質をジャッジしようと壁を高くして観察している人もいるでしょうが、経験がある先生であればそのような状態もすぐに感じられると思います。そのような生徒は、ヨガのクラス以外でも常に他者のことを「敵か味方か」と壁を作ってジャッジをする癖がついているはずです。しかしヨガの練習では、そのようなエゴの壁を保ち続けることが難しく、心理的な緊張が自然と弱まっていきます。

ヨガで心が軽くなるプロセスを考えてみる

鏡のあるヨガスタジオのクラスで安楽座で座り両腕を頭上に上げる人々

ヨガで心がスッキリするのは、どうしてでしょうか。様々な要因が考えられますが、主な理由をいくつか書き出していきます。

自分の外から内に意識を向けることで心の壁が消える

ヨガのクラスでは、外の世界に向いている意識を内に向ける練習を行います。

初心者は、自分の体を思い通りに動かすことに必死になりがちです。自分の体を動かすことに一生懸命になっている時は、周りの人をみる余裕はありません。周りを人を見たとしても、自分が正しいポーズを出来ているかを確認するためで、ジャッジする余裕はありませんね。

ヨガのポーズに少し慣れてくると、今度は呼吸への意識を深めるように教わります。

どのような体の動きをした時に呼吸がスムーズになるのか、どの動きで呼吸が難しくなるのかを観察していくと、周囲の人のことは全く気にならなくなりますね。

先生や周りの生徒に意識が向いている時は、呼吸に集中できていない時です。それに気がつくたびに呼吸に意識を戻していくと、自然と意識が外から内へと向かうようになります。

周囲の人が見えなくなった時、自分を攻撃する人の存在は感じなくなります。そうすると、自然と心の壁も消えていきます。

深い呼吸で緊張状態から解放される

呼吸への意識が深くなることは、心の壁をなくす大きな要因です。

人は緊張状態になると体全体の筋肉がこわばり、呼吸も浅く早くなります。これは、自然界でいつ敵が現れても俊敏に動けるための本能的な反応です。しかし現代社会では、物理的な危険がない場合でも緊張状態が続きすぎてしまいがちです。

ヨガでは、体を動かしている時でも必ず深い呼吸を続けます。長くて深い呼吸はリラックスしている状態で行われる呼吸であるため、神経も自然と弛緩してきます。すると、今まで抱いていた恐怖心や不安感も自然と弱まってくるはずです。

普段から緊張状態が続いている人は、深い呼吸をするのがとても難しいと感じるはずです。そのような人ほど呼吸の効果は大きいので、アーサナをしている時でもできるだけ呼吸への意識を解かないようにしてみてください。

アーサナの練習中に呼吸への意識を続けることは難しく感じますが、練習後には大きな開放感を得られるはずです。

チャクラのエネルギーを活発にすることで心が開かれる

ヨガ哲学では、心や体はプラーナ(気)と呼ばれる生命エネルギーで動いていると考え、プラーナ(気)が集まる場所をチャクラと呼びます。人には主要なチャクラが7つあり、それぞれのチャクラで働きが違います。チャクラにエネルギーがうまく流れていない場所があれば、その部分に不調が現れます。

社会的な不安や恐怖で緊張感が高くなっている人は、胸元のアナーハタ・チャクラと喉元のアージニャー・チャクラを整えることで楽になることが多いです。特に、社会生活に問題を抱えている場合には、胸を開くアーサナが最適です。ヨガのアーサナには、胸をあらゆる方角に広げていくポーズがたくさんありますので、わざわざ胸を開くことに特化したクラスを受けなくても、自然とアナーハタ・チャクラにエネルギーが入りやすくなります。

心に壁ができている時には、胸元が閉じがちです。多くの人の場合、巻き肩になっていることも多く、姿勢からみても胸が閉ざされていますね。ヨガのアーサナで意識的に胸が開かれることによって、心も自然と弛んでいきます。

また、恐怖心や警戒心は喉元を緊張させます。

喉は人の急所でもありますが、エネルギー的にも生命の甘露アムリタがある場所として知られています。緊張状態では喉元も自然に緊張しますが、近年はスマートフォンの利用でストレートネックになっている人も多く、姿勢からチャクラが閉じてしまっている人も多いです。

喉元のアージニャー・チャクラにエネルギーが流れるように首を動かすアーサナを行うと、緊張感が自然と弱まります。また、このチャクラが活発になると表現力が上がります。自分自身を表現できる力が養われることによって、人間関係もとてもスムーズになります。

あらゆる心の雑念を消すことで苦しみが消える

ヨガで最も効果があるのは瞑想です。瞑想では、心の中の雑念を消していきます。私たちが感じている不安や恐怖は心が生み出した未来への想像であり、今起きている現実ではありません。それらの苦しい想像を消していくのが、瞑想です。

瞑想の初期段階では、表面化している心の働きと雑念のみを消します。しかし、ネガティブな思考の奥には、必ず潜在的な記憶やトラウマがあります。その、奥深くで眠っている記憶のことをヨガ哲学ではサンスカーラ(潜在印象)と呼びます。ヨガの瞑想では、徐々に潜在的な記憶も消えていきます。苦しみの元となる心の働きが止まれば、それ以上の苦しみを感じることはありません。

理論よりも体験を大切にする

室内でルームウェアを身につけた女性が穏やかな表情で瞑想する様子

今回は、ヨガで心が軽くなる様々な理由をヨガ哲学の視点から説明しました。

ヨガを練習すると心が軽くなる理由には様々な要因が合わさっているので、一つだけの要因だけではありません。そのため、ヨガの練習をする時には「この効果のために、これを重点的に」と効果を狙って行うことよりも、バランスの良い練習をしながら自分に何が合っているのかを観察するのがいいと思います。

頭で考えることよりも実際に体験することで、自分の思考では想像ができないような効果を感じることもあります。

ヨガで自分を観察して自由な心の状態を経験すると、その経験をヨガマットの外でも活かせるようになってきます。

少しずつ、いつでも、どこにいても心が軽くなってくるといいですね。

ヨガジェネレーション講座情報

ヨガ哲学に興味のある人におすすめ