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すっかり気温が落ち着き、過ごしやすい季節の到来ですね。相変わらず、各地には海外の方々が多く、観光客が増えたなあという印象です。
こんにちは、ヨガジェネレーションのべーです。
こうなってくると必ずといって言いほど増えるのが、
写真撮ってもらっていいですか?
と話かけられること(笑)
職業柄、先生と生徒さんとの記念撮影にはすごく慣れています。なので、全然苦になりません。(笑)が、とにかく多い。「写真を撮ってください」と声をかけられることや道を聞かれること。あと、最近増えてきたのが(コロナ禍は随分減っていた)学生からの「聖書についてのアンケートに答えてくれませんか?」というやつ。(あれ、何なんだろう。本当に学生なんだろうか。)
とにかくびっくりするほど道で声をかけられることが多い。私と似たあなた。ようやく今日、その謎が解けるかもしれません。
人間の安心・安全は無意識下で体が反応する
この人は大丈夫
皆、私と初対面で、しかも道行く人たちの中で、どうしてちゃんと答えてくれるってわかるんだろう、とずっと不思議でした。もちろん、断ったことはありません。(さすがに聖書のアンケートはいつも断る。)
直感と言われたらそれまでですが、これを紐解いてくれたのが、実はポリヴェーガル理論でした。
ポリヴェーガル理論とは?
ポリヴェーガル理論とはステファン・W・ポージェス博士が発表した、画期的な理論で日本語では、多重迷走神経理論と訳されます。
従来の交感神経と副交感神経のバランス理論とは異なり、「交感神経系」と2つの副交感神経系「背側迷走神経系」と社会交流機能である「腹側迷走神経系」の多重な神経システムによって安全か危険かを判断していると考える理論です。
つまり、自律神経系を3段階に分類し、その働きによりストレスへの適応を図っていると説明します。
このポリヴェーガル理論を学ぶ際に、同時に重要な概念を勉強しました。それを次の段落で書いていきます。
安全かどうかを無意識に察知する。ニューロセプション
皆さんは「ニューロセプション」という言葉を聞いたことはありますか?「人間の無意識下でなされている安全かどうかを察知する神経系の評価」ことを云います。
この概念もステファン・W・ポージェス博士がポリヴェーガル理論を語る上で非常に重要な概念となっています。
簡単に言うならば、「この人何となく大丈夫そう」「なんか優しそう」という感覚、逆に「この人嫌な感じがする」「なんか近寄りがたい」という感覚、皆さんも経験があるはずです。
この「なんとなく」というのが、ニューロセプションが働いているということ。いうなれば第六感のようなもの。精神科医である松島幸恵先生は、「私は第六感と認識しています」と講座内でお話されていました。
つまり、これらは考えて行われるものではなく、あくまでも神経系がそれを察知し、自動的に評価し、身体の反応を調整しているのです。
そして、これによって、脅威に対する闘争・逃走反応や、逆に、安心感に基づくリラックス反応を無意識に引き起こしているというわけです。
つまり、私たちは知らない人に声をかけるときに、無意識下で安全かどうかの判断をし、体が反応しているということになります。
ニューロセプションと無意識下の体の反応
ちなみにここで理解したいのが「無意識下の体の反応」内受容感覚というもの。内受容感覚とは、心拍や呼吸、空腹やだるさ、疲れなど体の状態を認識する感覚のことです。
実は、私たちが感情を感じる時には、この内受容感覚をキャッチし、体の変化が生じています。
例えば、怒りで胃のあたりが熱くなる、不安で胸がドキドキする、などが良い例です。つまり「感情」とは、身体内部の変化に対して私たちが意味付け(解釈)を行った結果とも言えます。
また、ポージェス博士は著書でニューロセプションはこの内受容感覚と混じり合っていると話しています。
「なぜかわからないけれど、あの人の顔を見ると動悸がする」
「あの人と一緒にいるとリラックスできる」
こういった反応は、「なんとなく」というニューロセプションに対して体の内受容感覚が感じている結果ということですね。
内受容感覚に働きかけると心は安定する。瞑想・ヨガの出番
この内受容感覚を正確にキャッチすることが私たちの生活には重要です。
例えば、
「ストレスがかかっているのに、それに気が付かない」
「おなかがいっぱいなはずなのに、食べるのをやめられない」
こういったことが結果、病の原因になってしまうことも。
うつ病や摂食障害の患者さんは、この内受容感覚を感じ取る力が弱いことが近年の研究でわかっています。また、内受容感覚が弱いと体の小さな異変に気付きにくいので、心身がどんどん疲弊し、重症化して初めて気が付く事態にも。
逆に、不安障害を抱えている方は、内受容感覚が敏感すぎるということもあるそう。
つまり、敏感すぎても、鈍感すぎてもダメだということです。この内受容感覚を正確に最適化するのには、ヨガや瞑想、呼吸法といった方法が良いとされています。
「今を感じること」で内受容感覚を最適化する
私たち、ヨガをしている人間は、「今」を感じることが得意ですよね。ヨガや瞑想は、行うことで、自分の内側で起こっていることが気付きやすくなります。小さな身体の変化に気付けるようになると、自分の体調やストレスサインだけでなく、“自分の本当の気持ち”にも気付きやすくなる、ということを皆さんご存知のはず。
ヨガによって、内受容感覚を正確にキャッチすることで、小さな感情の変化に気づき、大きくなる前に対処したり、人間関係の誤解を生じにくくするということができるのです。
最初のお話に戻りますが、皆さん「あ、あの人に相談したらちゃんと答えてくれそう」「この人なら、写真撮ってくれそう」と思って行動したとき、相手は思い通りの行動をしてくれていますか?そうであれば、皆さんのニューロセプションや内受容感覚は正確だということになります。
これが、おや?と感じることがある方、ヨガや瞑想で、自分の内側への気づきを高める必要があるかもしれませんね。
逆に、よく声をかけられる、という方。きっとあなたには安心と安全が担保されていることを皆感じているということです。私も急いでいるときほど、よく声をかけられますが、これは相手にとって安全であると思ってもらえているということで、良しとしようと思います。(笑)
でも、宗教関連の話は、出来たらスルーできたらいいのになぁ…。
随分と長くなってしまいましたが、ポリヴェーガル理論やニューロセプションについてもっと学んでみたいという方は、下記の講座が来月開催されますので、良かったらいらしてくださいね。ヨガと心のお話、とても興味深いお話を聞くことができます。
参考資料
- ステファン・ポージェス『ポリヴェーガル理論入門』(春秋社、2018年)
- 浅井咲子「今ここ」神経系エクササイズ(梨の木社、2019年)