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世界中で、数字にはスピリチュアルな意味があると考えられています。ヨガでも様々な数字が出てきますが、その中でも108はとても重要な数字として知られています。
日本でも除夜の鐘を108回つくなど、何となく108は特別であると知られていますね。野球のボールの縫い目も108あり、案外身近なところに108が関係することがあります。
今回は、ヨガにおける108の意味について考えてみたいと思います。
どうして108が特別な数字なのか?諸説みてみよう
ヨガでは伝統的に、108の珠が付いているマーラと呼ばれる数珠を用いてマントラを唱えます。ヨガの実践者たちは右手にマーラを持ち、マントラを唱えながら1つずつ珠を動かします。ちょうど1周すると、マントラを108回唱えたことになります。
また、ヨガで使うマーラと同様にキリスト教カトリックのロザリオも108の珠が付いており、それで祈りの回数を数えます。
どうして108なのかという理由は諸説ありますが、今回は代表的なものを紹介します。
1・0・8の象徴的な組み合わせ
世界中で数字は様々なものを象徴すると考えられていますが、ヨガの場合はどうでしょうか。
1:1は絶対的な存在を表します。神または高次の真実を象徴します。
0:神秘的な数字で、「無」と「永遠」の両方です。空虚または完全性を象徴します。
8:無限または永遠を象徴します。どこまでも続き、終わりがありません。
また、この3つの数字を足すと9になりますが、9はとてもスピリチュアルな数字で、高いエネルギーを持っています。
シュリ・ヤントラを表す数字
インドでは、ヤントラと呼ばれる模様を使ってスピリチュアルな儀式を行うことが多くあります。仏教のマンダラとも、深い関係があります。そんなヤントラの中でも、もっともエネルギーが高いのがシュリ・ヤントラです。
シュリ ・ヤントラには 3 本の線が交差するマルマ (点) が 54 か所あります。それぞれが交差する点には男性性と女性性があり、シヴァとシャクティを表しています。したがって、シュリ・ ヤントラで人体を定義するポイントは 54 x 2で108 個あります。
宇宙の距離の神秘
地球と月、地球と太陽の間の距離もまた108に関係しています。
月と地球の距離は、月の直径の約108倍です。太陽と地球の距離は、太陽の直径の約108倍です。(ただし、この比率も楕円軌道の影響を受けるため、この距離が完璧になるのは1か月に1回のみだと分かっています。)天文学的にも108は特別な数字だと思うと、神秘性を感じますね。
数学的な理由を見てみよう
中世イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチは、108が存在の完全性を表していると考えました。フィボナッチは、自然の黄金比に関係する「フィボナッチ数列」を発表しました。植物の葉や花びらの螺旋状の配置、松かさやひまわりの種の配置は黄金比に従っていると言います。「フィボナッチ数列」は、ウサギがつがいになり子供を増やす数から見つけたそうですが、多くの木の枝分かれだけでなく、気管支や肝臓の血管の枝分かれも同様の法則で増えていきます。
フィボナッチ数列の最初の24個の数字は、0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987, 1597, 2584, 4181, 6765, 10946, 17711, 2865…です。例えば、1辺の長さが“1,1,2,3,5,8,13,21… というフィボナッチ数列に従った正方形を並べていくと、自然と渦巻状に並びます。こうしてできた螺旋は「生命の曲線」と呼ばれ、松ぼっくりやヒマワリの種、オウムガイの殻に至るまで「生命の曲線」に従っています。
また、この神秘的な数列を10進法に当てはめると、(0), 1, 1, 2, 3, 5, 8, 4, 3, 7, 1, 8, 9, 8, 8, 7, 6, 4, 1, 5, 6, 2, 8, 1という数字の繰り返しのパターンになります。このようにして表れた24個の数字の合計は108となります。
参考文献:『Phyllotaxis: A Systemic Study in Plant Morphogenesis』. ケンブリッジ大学出版. 1994年.
参考サイト:http://www.fibonaccilifechart.com/writings/the-number-108
サンスクリット語のアルファベットの数
サンスクリット語のアルファベットの数も108に関係しています。インドでは、古代からサンスクリット語は神の言葉とされ、音こそが世界の創造主ブラフマンだという考えもあります。
サンスクリットのアルファベットは、54文字で構成されていて、それぞれの文字には男性エネルギー(シヴァ)と女性エネルギー(シャクティ)の両方が宿っています。この2つのエネルギーを掛け合わせると54 × 2 = 108となり、108という数字が生まれます。
108のチャクラ
体内には108のチャクラがあるとも言われています。通常ヨガではスシュムナー(中央気道)沿いにある7個のチャクラを重要視しますが、体内で働くチャクラは108個です。
人に備わるチャクラは114個ありますが、そのうちの2個は体外にあります。また、4個は結果的に開花するここはあっても、意識的に働きかけることができません。そのため、108のチャクラが、私たちがアプローチ可能なものとして知られています。(チャクラの数は88,000あるという説もあり、流派によって考えが大きく異なります。)
インド占星術における108
インド占星術は、月を中心に天体を見る考え方です。月が軌道を1周するのに、27日かかります。そして月の移動距離を27日で分割したものをナクシャトラと呼んでいて、このナクシャトラをさらに4分割して星の位置を読むため、全体では27×4で108になります。
現在でも、インドでは占星術に従ってあらゆる行事を行うため、このナクシャトラとこれを4分割したパダの定義はとても日常的なものです。
また、12の黄道帯と9の惑星をかけると108になるとも言われています。
上記以外にも、アーユルヴェーダでは体内にある108のマルマ(ツボ)について説かれていたり、仏教では108の煩悩、チベット仏教では聖典の数、ジャイナ教における108の美徳のように、108に関係するものはたくさんあります。
また、キリスト教では11月2日をすべての霊に祈りを捧げる「死者の日」(All Souls’ Day)とし、12月25日のクリスマスまでの54日間で、昼と夜が切り替わる時間は108回訪れると認識されています。
世界中で諸説唱えられていますが、108が重要な数字だと言うことは共通した認識に感じられます。
ヨガの練習で活かす108回
では、ヨガの練習で108はどのように活かされているのでしょうか。
代表的な実践は、マントラを108回唱えることです。マントラの中での最高峰であるガーヤトリーマントラ(太陽神へのマントラ)を108回唱えることによって、心の中のあらゆる不浄性が取り除かれます。教典『バガヴァッド・ギーター』の中でも、クリシュナが自分は韻律の中のガーヤトリーだと話しており、とても重要視されています。
また、多くのヨガの学校では、シンプルにオームのマントラを108回唱えることも多くあります。オームを唱える時、初期段階ではハッキリと聞こえる声で唱えますが、自分が発するオームの音の記憶がしっかりと刻まれてきて集中力が高まってきたら、徐々に音量を下げていき、最後には実際には音を出さず、心の中でオームを唱えるようにします。
年末年始になると、108回の太陽礼拝イベントに参加する人も多いと思います。今年一年の業や煩悩が洗われて浄化される気がしますね。中には108回を連続して行うのが難しいと感じる人もいるでしょう。その場合には、半数の54回、または27回を行うのがお勧めです。
マントラを唱える時も同様に、108回が難しい時には54回か27回を行うのがお勧めです。
様々な理由が考えられますが、古代から108に何らかの神聖な意味が認められていたことが興味深いですね。みなさんも、マントラを唱える時や瞑想で呼吸を数える時、アーサナの練習をする時など、様々な場面で108という数字を意識してみると面白いかもしれません。