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多くの人が新年や新年度に抱負をたてると思いますが、ほとんどの抱負は数日後には忘れ去られてしまいます。これは時期的なイベントのようなもので、本当の願いとは違うものです。
ヨガでも、サンカルパと呼ばれる自分への誓いを立てます。それは、自分の本質に近づくためのもので、3日坊主にできるような軽いものではありません。自分自身への誓いであるサンカルパについて学び、自分自身を軽く扱わない生き方を選択しましょう。
ヨガのサンカルパと一般的な目標の違い
サンカルパの語源を見ていくと、Sanは「最高の真実との繋がり」、Kalpaは「誓い」を意味しています。つまり、サンカルパは単純な願い事ではなく、自分自身の本質を見つけていくための抱負であり自分との誓いです。
サンカルパは、自分の内側の幸福に向かっていくための誓いであるため、物質的に何かを得るための目標とは違います。例えば「年収の倍増」や「資格を取得する」といった目標は、人生の中では大切なものかもしれませんが本質的なものではありません。
自分を知るための願いは大切にすべき
抱負や誓いをたてても、3日坊主になりやすいという人も多いと思います。例えば「5キロ痩せるまでお酒を飲まない」「朝活で毎朝30分間英語の勉強をする」などの誓いをたてても、誰かに誘われたら外食に出掛けてお酒を飲んでしまったり、お酒を飲んだ翌朝は体がだるくて朝活の勉強ができなくなってしまったりするような経験は誰にでもあるはずです。その結果、毎年何度も「ダイエットは明日から」と言い続けてしまいます。そのような緩さで、自分自身に常に向き合い続けても良いのでしょうか。
私たちの人生で最も大切な存在は、自分自身です。しかし多くの人は、自分のことを後回しにしがちです。仕事をしていれば、上司の指示にノーが言えず自分の心を押し殺してしまったり、子育てをしていれば、子供のことを優先して自分の食事や睡眠には無頓着になってしまったりしがちです。その結果、自分自身のバランスが崩れ、結果的に周囲にも迷惑をかけてしまうことが起こってしまいます。
忙しい生活の中でも、自分自身を蔑ろにすることをやめましょう。サンカルパは自分から目を逸らさないための大切な誓いです。
2段階のサンカルパを知ろう
最高のサンカルパは、最高の真実、自分の本質に出会うことです。しかし、漠然とした抱負は抽象的すぎて実感を持つことが難しいので、2段階のサンカルパを使って自分の幸福を探していきましょう。
- 具体的なサンカルパ
- 包括的なサンカルパ
最終的には包括的なサンカルパによって本質に近づくことができますが、最初のステップとして、より具体的な願いを定めることで歩み始めることができます。
ステップ1・具体的なサンカルパを定める
先に述べたように、具体的と言っても何らかの成果や財産を得るような願いはサンカルパではありません。そのような条件付きの幸福は、自分自身の精神と人生を縛り付けるものです。
サンカルパを考える上で、自分自身が何に幸福を感じるのかを探す必要があります。自分自身の内側からの声を聞くことは、簡単ではありません。しかし、ゆっくりと瞑想をしたり一人の時間を作ったり、ジャーナリング(書き出し)のようなテクニックを繰り返し行う中で、自分の本心が少しずつ見えてきます。
自分が喜びを感じる瞬間を見つけたら、自分をその行動に導くようなサンカルパを見つけていきましょう。
例えば、
- 自分の体が喜ぶ新鮮な食事を摂る
- 毎日、自分に向き合うヨガの練習を大切に行う
- 大切な家族との時間を最優先にする
など……
ヨガのサンカルパでは、具体的すぎる数字などの目標は入れないほうが良いです。例えば「毎日30分間の瞑想」のような条件を増やすことによって、それができたかできなかったかで自分自身をジャッジしてしまうからです。ヨガでは最善を尽くすことが大切であって、結果に重きをおきません。自分自身が、サンカルパを忘れることなく行動できているかどうかが大切です。
例えば、できる限り有機栽培で栄養価が高い食事を摂ろうと誓っていても、友人がサプライズで用意してくれたケーキを食べてしまうことは悪ではありません。あくまで、自分にとっての最善を選ぶのがヨガであり、自分を条件で縛るものではないことを覚えておきましょう。
ステップ2・包括的な深いサンカルパ
具体的なサンカルパの実践ができてくると、自分にとっての行動の判断基準がわかるようになってきます。その時には、食事やヨガといった具体的な言葉を使わなくても、自分自身を快適な状態に導くためのサンカルパがわかってきます。
同じように本質を求めていても、人によってピンとくる言葉は違います。例えば「愛」や「平和」、「癒し」といった言葉が自分に最も必要なものであると考えたとします。その時に「自分は平和そのものである」というように、何かを得るのではなく自分の内側から溢れ出るイメージを持ちましょう。ヨガの考えでは、幸福は全て自分の内側にあるものです。それに気がつくことが、ヨガの道です。
サンカルパは自分の進む道を照らすもの
サンカルパは、毎日唱え続けることが大切です。ヨガ・ニードラの練習中に唱える方法がポピュラーですが、毎日の瞑想の最初と最後、または夜寝る前などの決まった時間に繰り返し唱える習慣を身につけましょう。
心は、私たちがエネルギーを正しい方向に向ければ、私たちの最も深い願望を実現する計り知れない力を持っています。しかし、心と感覚の気が散る性質によって誤った方向に向いてしまうことがよくあるので、サンカルパを繰り返し唱えて心が誤った方向に向かうことを防ぎましょう。サンカルパは、自分が進む正しい道を照らしてくれる光そのものなのです。
サンカルパを実践しよう。4つのステップ
それでは、サンカルパを日常に取り入れていきましょう。
① 時間をかけて自分自身の声を深く聞く練習をする
まずはサンカルパを決めるために、自分を知る必要があります。内省すると、必ずしも物質的な世界だけによって動かされているわけではない、人の最も深い欲望が明らかになることがあります。<b>自分の心に響くもの、エネルギーを費やしたいものを特定</b>してください。
② 自分のサンカルパを決める
ポジティブで思い出しやすい言葉を使って文章を構成しましょう。必ず自分自身を言葉に含めてください。つまり「私」、「私の」という言葉を使用してください。
③ 繰り返し同じ言葉を唱える
これは、心のサンカルパ・シャクティ(誓いのエネルギー)に栄養を与えます。また、自分の道を見失わないようになります。
④ サンカルパを見直す
サンカルパは安易に修正するものではないので、サンカルパを定める時には充分な時間をかけて自分に問いかけます。しかしサンカルパは、その人の人生の状況に応じて時間の経過とともに進化する可能性があるので、必要な時には柔軟に修正をします。
そのため、サンカルパを定めた後であっても、毎日自分自身の心の声をきくステップ①を行い続けることが大切です。
サンカルパを取り入れることで、人生に迷いがなくなる
サンカルパを唱える習慣を身につけることは、常に自分に向き合い、自分の進むべき道に向き合うことです。自分が本当に求める道がわかっていれば、迷うことがありません。
例えば「愛」を大切にしていても、何が自分にとっての愛なのかは人によって違います。直接的に言葉で伝えるのか、距離が離れていても大切な人たちのために働くことなのか、誰かと時間を共有することなのか、どんな行動が正解なのかは自分自身にしかわかりません。
自分だけのオーダーメイドの幸せを見つけるところから始めてみましょう。