みなさん、こんにちは!丘紫真璃です。
今回は、自分の本の紹介になってしまいますが、私が書いた『キラキラ妖怪クラブ』を紹介したいと思います。
世の中には、素晴らしい名作がたくさんあります。こちらのコラムで紹介しきれていない名作も、まだまだたくさんあると思います。そんな中で、なぜ、このタイミングで自分の本を紹介するのかといいますと、久しぶりに自分で読んで、面白い!と笑ってしまったからなのです。そしてこの本もまた、ヨガと関係あるって言えるのじゃないのかなって、考えてしまったからなのです。
というわけで、小説家の先生方の名作を押しのけて、自分の本を紹介するのも申し訳ないのですが、今回は『キラキラ妖怪クラブ』の楽しさとヨガとのつながりをみなさんに紹介したいと思います。最後までお付き合いいただけたら幸いです。
今さらですが…… 自己紹介

このコラムを書いている私、丘紫真璃という人物がいったい何者なのかということについては、以前、紹介させていただきました。
が!丘紫真璃を知らないという方もたくさんいらっしゃると思いますので、あらためて自己紹介をしたいと思います。
1988年生まれ。小さい頃から、母がぬいぐるみを使って私と兄にお話を聞かせてくれていた影響もあり、小学校の頃からお話を書くようになりました。小学校の夏休みの自由研究として、自分の書いたお話を学校に提出していたのです。
そんな私は、14歳の時にヒョンなことから『黄色い卵は誰のもの?』という本を出版させていただくことになり、以後、子ども向けの本を書いております。それらの中から、今回は『キラキラ妖怪クラブ』という中学年向けのお話を紹介したいと思います。
オニババに食われちゃう!?

主人公は、小学校4年生の山野なずな。なずなは、弟のせりとお父さんと一緒に、シラギクマンションに住んでいます。なずなとせりのお父さんは古民家大好きという趣味を持っていて、ある日、シラギクマンションの裏山にポツンと1軒建っている古民家を買ってしまいます。
山奥の古民家で暮らすことになったなずなは、毎日、通学の時に山道を通らなければならず、とても怖い思いをしていました。朝はまだしも、夕方の山道は暗くなるので、そこを通るのが怖いのです。
そんなある日、うっかり帰るのが遅くなってしまったなずなと弟のせりが、すっかり暗くなった山道を一緒に怖がりながら走って家に向かっているところに、とんでもないものが現れます。
ザッ!
何かが木の上から飛びおりてきて、2人の前に立ちはだかりました。
おばあさんです。ボロボロのキモノを着たしらが頭のおばあさん!
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!」
2人は、心ぞうが、1000万㎞もかなたにふっとんだみたいになって、グルリと向きを変えると、むちゅうでにげ出そうとしました。丘紫真璃. 『キラキラ妖怪クラブ』. 講談社. 2023. p,13
2人の前に現れたのは、世にもおそろしいオニババでした。オニババは、ダラダラとヨダレをたらしながら、なずなとせりを食ってやると2人におそろしく迫ります。
なずなは夢中になって、「もっとおいしいご馳走をしてあげるから、私達を食べないで下さい!」とオニババに頼みこみ、オニババが満足するようなおいしいご馳走を求めて、山のふもとのコンビニに必死になって駆け込みます。
なずなにピタリとくっついてきたオニババは、コンビニにとびこむと、ヨダレをダラダラたらして、店内をギロギロ眺めまわします。なずなは必死になって、オニババが気に入りそうな商品を探しました。
「このコンビニとかいうとうめい人間の家には、ごちそうは、ちゃんとあるのかね。それがかんじんなことだが」
オニババは、キランとキバをむき出して、コンビニの中をジロジロながめまわしました。
なずなは、あわてて大きくうなずいて、
「もちろんありますよ。何がいいですか? おにぎりか、おべんとうか……」
「やわらかーくてあまーい子どもよりうまいのは、どれだい?」
「やわらかくてあまいのが好きなら、おかしがいいかもしれないですね!」
なずなは、お店の真ん中にあるおかしのたなにすっとんで、
「たとえばホラ! ハッピーシュークリームは、すっごくやわらかくてあまいです」
ハッピーシュークリームのふくろを1つ取り上げて、いっしょうけんめいアピールしました。丘紫真璃. 『キラキラ妖怪クラブ』. 講談社. 2023. pp,25-26
オニババは、やわらかくてあまいハッピーシュークリームがものすごく気に入ってしまいます。それはイイのですが、気に入りすぎて大変なことになりました。
オニババは、レジでお金を払うなんてことはもちろん知りませんから、店じゅうのおかしというおかしを、次から次に食べまくりはじめてしまったのです。しかも、全部ふくろごと丸のみにしていくのです。
おかしを食べ始めたオニババを、誰も止めることができません。店長さんもオニババに突き飛ばされて気絶してしまい、なずなとせりはただ困りきってオニババを見つめるばかり。
オニババは、やわらかくもあまくもないゲキカラのおかしまで、何もかもふくろごと吞み込んでしまい、とうとう、コンビニのおかしの棚を見事に空っぽにしてしまいました!
オニババの口からオニおかし!?

コンビニのおかしを全てふくろごと食いつくしたオニババは、今度は腹痛を起こして、その場にバッタリと倒れ伏してしまいます。
苦しみもだえるオニババを見ているうちに、弟のせりがとんでもないことを言い出します。
このまま腹痛で死んでしまったら、オニババはなずなとせりをものすごく恨むだろうと。
そして、なずなたちの前に化けて出て来て、2人を呪い殺すんじゃないかと。
オニババに呪い殺されることが怖いあまり、なずなはオニババの腹痛を治療できるてんぐの医者を呼びに行くことになります。さんざん怖い思いをし大冒険をしたなずなは、ついにてんぐ先生をコンビニに連れてくることに成功しました。てんぐ先生は、オニババの治療をしてくれましたが、その治療は何とも荒っぽいものでした。腹痛で苦しむオニババの足首をもって逆さづりにし、ブンブンブンブンとふり回したのです。
すると驚くことに、オニババの口から、次から次へとコンビニのおかしが袋ごと飛び出してきたのです!しかも、オニババの口から出て来たおかしの袋は、びっくりするくらいキラキラに光り輝いていました。おまけに、オニババの口から出て来たおかしの袋は、なぜか商品名まで変わっており「オニのハッピーシュークリーム」と書いてあったのです!さらに、そのふくろには、食べたら1日だけオニになると意味深なことまで書いてありました。
「食べたら1日だけオニになるって……どういうことだろう?」
店長さんは、オニのハッピーシュークリームをじっと見つめました。
「こわいな。キケンなものかもしれない。安全面を考えたらどう考えたってすててしまったほうが良さそうだ……」
「そうだよ。オニババのおかしなんてすてたほうがいいに決まってる!」
なずなは大声で言いましたが、店長さんは首をかしげてつぶやきました。
「でも……何だろう? すててはいけない、ともう1人のぼくが言っている。これはスゴイ商品になる予感がする。とてつもなく面白い商品じゃないかって予感がする。それに、すごくキレイだ」
店長さんは、きらめくオニのハッピーシュークリームのふくろをウットリとながめ、
「きらめいている。キラキラと! かがやきわたっている!」
そうさけぶと、ビリッ。オニのハッピーシュークリームのふくろをやぶりました。
「アッ!」と、2人が息をのむと、
「においもいい!」
店長さんは、そうさけんで、パクリと食べちゃったんです。丘紫真璃. 『キラキラ妖怪クラブ』. 講談社. 2023. p,79. pp,81-82
オニのハッピーシュークリームを食べた店長さんは、本当にオニになってしまいました。
常識という縛りをぶちきりまくる、オニババというおばあさん

オニになった店長さんがいったいどうなってしまったのか?その後、このオニおかしはコンビニの新商品として並べられることになり、町中に大騒ぎを巻き起こすことになりますが、それはどんな騒ぎだったのか?続きは、ぜひ、本でお読みください。
というわけで、そろそろ、いったいこの本のどこがヨガとつながっているのかについて、考えていきたいと思います。
物語の冒頭で、オニババはおそろしい妖怪として、なずなとせりの目の前に出現します。
ところが、コンビニのおかしを食べ「オニおかし」を口から吐き出すという珍行動を起こした後から、オニババは全く人が変わったようになってしまいます。
新しいオニババは、子どもには興味がなくなってしまったのです。子どもよりもおかしの方がずっとおいしいので、おかしを食べるオニババとして新しく生きることになったのです。
おかしを食べる新オニババは、それを食べると1日だけオニになる夢のような商品を生み出し、コンビニの店員さんにまでなってしまいます。
なずなとせりを食おうとしていたおっそろしいオニババだというのに、何と!なずなとせりはオニババとすっかり仲良くなってしまい、一緒にご飯を食べるようにまでなってしまうのです。いじめっこ内田に復讐してやりたいと怒ったなずなは、オニババに相談を持ちかけますし、オニおかしで町中が大騒動になった時にも、二人はオニババに助けを求めます。
おそろしかったはずのオニババは、いつの間にか、頼れる存在にまで変わってしまうのです。
ヨガの一番大きな目的は、縛りをほどくことだといいますよね。
子どもを食う妖怪のオニババなんて恐ろしい存在のはずです。ところが、物語を読み進めていくうちに、オニババは怖いという縛りはいつの間にかなくなってしまい、オニババは世にも楽しく頼れる存在に変わっていってしまうのです。ですから、オニババは恐ろしいという縛りがほどける物語といってもいいかなと、私は思っているのですが、みなさんはいかがでしょうか。
オニババやいじめっこ内田が怖くてたまらなかったなずなですが、物語が進むにつれ、オニババや内田の怖さを乗り越えていきます。オニババは怖い、内田は怖いという縛りを見事に断ち切ったなずなは、たくましく成長していきます。
『キラキラ妖怪クラブ』は、自分で言うのもどうかと思いますが、他にはないとてつもなく変わったお話ではないかと思います。
大人の方が読んでも楽しいと思いますので、ご興味があればぜひ!なずなとせりとオニババの物語を読んでみて下さい。よろしくお願いいたします!