海辺でシールシャーサナを行うヨガウェアを着た女性

ハタヨガの秘技:シールシャーサナ(頭倒立)で不死身になる!?


ヨガの練習を始めてから、若々しくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。実は、ハタヨガの教典の中には、ヨガの練習によって長寿や不死身になる方法がいくつも書かれています。そんな中でも、シールシャーサナのような逆転のポーズは、老化を防ぎ、死を克服する秘技として書かれています。
今回は、古代ヨガが説く若返りの秘密を紹介します。

ヨガ的な寿命(アムリタ)

安楽座で座り両手はチンムドラを組んでいる黒いヨガウェアの女性

どのように寿命を伸ばすのかを知るためには、どうして寿命が短くなっていくのかを理解する必要があります。インドでは、人の寿命は誰でも生まれた時に決まっていると考えられています。そして、寿命に関わるのが生命の甘露であるアムリタです。
アムリタは舌の根元の上部から分泌される甘露で、生命力そのものであり、その量が寿命だと考えられています。

舌の根元から分泌されたアムリタは、喉元からポトポトと1滴ずつ滴り落ちます。腹部まで落ちたアムリタは、腹部の消化の炎(アグニ)によって燃やされます。体内にアムリタが残っている時は生命を維持し、全てのアムリタが燃え尽きた時に臨終を迎えると考えられています。

神々しい姿の月から流れ出る甘露はことごとく日が飲んでしまう。そのために肉体は老衰するのである。佐保田鶴治. 『ヨーガ根本経典;ハタヨーガ・プラディーピカー』3/77. 平河出版社. 1983. p.239

甘露であるアムリタは、度々「月」と表現されます。それに対して、腹部の消化の炎は、体内に宿る「太陽のエネルギー」です。
私たちの体の中に、太陽と月が宿ると考えるのは興味深いですね。

甘露アムリタを守るハタヨガの秘技

シールシャーサナを行うモノトーンのヨガウェアの女性

人が普通に生活していると、アムリタはポトポトと落ち続け、燃やされ、失われ続けていきます。ハタヨがでは、このアムリタを守るいくつかの方法が説かれていますが、誰もが実践しやすいものが逆転のアーサナです。

これについて、日の口をごまかすのに、優れた手段がある。しかし、これはグルの指導によってのみ会得できるもので、例え百万の理論を持っても会得することはできない。 ヘソが上にあり、口蓋が下にくる姿勢をとる時、日は上にあり、月は下にくる。このヴィパリータ(逆転)という名のカラニー(しぐさ)はグルの口づたえで学ばねばならない。佐保田鶴治. 『ヨーガ根本経典;ハタヨーガ・プラディーピカー』3/78-79. 平河出版社. 1983. p.240

日を誤魔化すという表現をしているのが、興味深いですね。
通常、人間は、頭が上で胴体が下に来る姿勢で生活を行っています。その姿勢により、喉元にあるアムリタは、重力によって胃の方に落ちていきます。これが、アムリタが失われる原因です。
それであれば、腹部が上で、喉元が下に来るようにすれば、アムリタは腹部の炎に燃やされることはありません。

ただし、この実践は必ずグル(師匠)から正しい方法で学ばなければなりません。
これはあらゆるアーサナの練習で共通していますが、正しい方法を知らずに見よう見まねで練習することはとても危険ですね。
シールシャーサナであれば、間違った方法で行うと、頚椎へ負担をかけてしまうことがあります。また、血圧の急激な変化や、心臓への圧力がかかることもあるため、健康に悪影響を及ぼす場合もあります。
誰もが急に、逆転のアーサナのみを練習すればいいわけではなく、じっくりと体の準備を行ってから、正しい方法を教えてくれる先生を見つけることが大切ですね。

教典に書かれた逆転のポーズによる効果

ヨガ初心者にとっては少し難しい逆転のポーズですが、とても大きな効果があることが教典には記されています。

そして、日ごとに1セツナずつ増していく。そうしたならば、六ヶ月の後には、しわと白髪、はなくなる。毎日1ヤーマ(三時間)もこれを行うならば死を克服するであろう。佐保田鶴治. 『ヨーガ根本経典;ハタヨーガ・プラディーピカー』3/82. 平河出版社. 1983. p.241

毎日3時間、逆転のポーズを行うならば、完全に死を克服できると説かれています。
流石に1日3時間も逆転のポーズを実践できる人は滅多にいないと思いますが、ヨガの効果は100か0ではありません。毎日少しずつでも実践を続けることによって、確実に効果を感じることができます。

シワがなくなり肌は若々しくなり、白髪がなくなりコシのある健康的な髪になるなら、とても嬉しいですね。何より、自分自身の内側に若々しい活力が湧いてきます。

逆転のポーズ(ヴィタリータ・カラニー)を実践してみよう

ヴィタリータ・カラニーを行う黒いヨガウェアの女性

逆転のアーサナで代表的なものはシールシャーサナ(頭倒立)ですが、このアーサナにはしっかりとした身体の準備と段階的な練習が必要です。
シールシャーサナと同様に、代表的なアーサナとして挙げられるのは、サーランバ・サルワーンガーサア(肩立ちのポーズ)です。同様に、ハラーサナ(鋤のポーズ)もとても効果を感じやすいアーサナです。ただし、首への負担が大きいポーズなので、やはり適切な指導のもとで練習する必要があります。ヴィタリータ・カラニーには様々なバリエーションがあるため、自分自身の状態に合わせて練習を行いましょう。

同様の効果を感じるためには、ダウンドッグのようなアーサナも効果的です。長くホールドして、全身にどのような変化があるのか観察してみましょう。
また、仰向けになり、両足を壁に向けて上げる簡易的な方法もあります。体のどこにも緊張がないため、リラックスして行うことができますね。

ヨガの練習で大切なことは、その時、自分自身の内側で何を感じているのかをしっかりと観察することです。体のどの部分にエネルギーが集まっていて、どのような呼吸の流れをしているのか意識しましょう。観察しながら行うことで、変化を何倍にも感じることができます。

逆転のポーズを行う時の注意点

ヴィタリータ・カラニーは、消化の火を活性化させます。そのため、未消化の不純物が体内からなくなり、軽快さを感じることができます。しかし、消化の火が強くなることで、自分自身を焼いてしまうことがあります。
逆転のポーズを多く行う時には、しっかりと栄養のある食事を充分に食べるべきだと言われています。乾燥させすぎないように、良質な油分を含んだ健康的な食事を心がけたいです。

ヨガの知識は実践から学ぶもの

今回は、ハタヨガの教典に説かれた死と老化を克服する方法を紹介しました。
生命の甘露であるアムリタなど、聞きなれない言葉が出てくると、まるで現実味がないかもしれません。しかし、何千年も昔に実践され、今日まで伝えられてきたことには、きっと理由があるはずです。怪しげなカタカナ用語が出てきても、怖がらずに実践してみましょう。

実際に行うヨガの練習は、至ってシンプルなものです。また、シールシャーサナのような練習は、誰もが効果を感じやすいものです。普段の練習の中で、ほんの少し意識して長く実践することで変化を感じられます。

自分自身の体を使って学ぶことができるのは、とても楽しいですね。


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