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祈りとは、何でしょうか。それは、感謝の気持ちなのかもしれません。
私たちは、人生の困難に遭遇した時に「神様助けて!」と祈るかもしれませんが、祈りの心は、幸福な時こそ忘れないようにしたいものです。
ヨガを練習している時は、自分自身への意識が高くなっている状態です。そんな時こそ、自分自身への感謝を思い出せる祈りの時間にしませんか。
ヨガ哲学における祈りと感謝の関係

ヨガと祈りは、とても深い関係があります。
教典『ヨガ・スートラ』の中では、イシュワラ・プラニダーナ(自在神への祈念)という教えが繰り返し説かれています。
自在神イシュワラとは、物質世界に汚されていない純粋な真我(プルシャ)であり、ヨガを志す実践者にとってはグル(師)であるとも書かれています。
ヨガは、自分自身の努力で自分を高めるものですが、自分だけの力で叶うものではありません。ヨガの教えを伝えてくれた先生や先人たち、自分に命を与えてくれた両親や食材を作ってくれる人たち。たとえ一人で籠って練習していたとしても、自分だけの力ではないことを忘れないようにしたいです。
エゴが高まり傲慢になりそうな時ほど、祈りの心が大切です。エゴや傲慢さが高まるほど、ヨガの効果とは逆の方向に向かってしまいます。自分自身への強すぎる執着を弱めてくれるのがイシュワラ・プラニダーラ(自在神への祈念)です。
https://www.yoga-gene.com/post-23888/
また『バガヴァッド・ギーター』では、バクティ・ヨガ(神への親愛のヨガ)を勧めています。それは、ヨガの練習をしている時だけでなく、日常のあらゆる行動を祈りの行為として行うという教えです。例えば、食事も自分の内側に宿る純粋な魂への捧げ物です。部屋の掃除をしている時も、空間を浄化する神聖な時間です。そんな風に感じられると、毎日を大切に生きられそうですね。
https://www.yoga-gene.com/post-37123/
ヨガの八支則の中での祈り
『ヨガ・スートラ』の中に書かれている実践も、祈りの心を持って行うことで練習の質が高まります。いくつかの代表的な教えを紹介します。
感謝の心から生まれるサントーシャ(知足)

ヨガ哲学で有名な教えに、サントーシャがあります。これは「足るを知る」こと、「満足する」ことを意味します。
私たちが苦しいと感じる時は、無いものに意識が向いている時です。人の心は足りないことばかりに意識が向きがちで、すでに有るもののことは忘れがちです。
例えば、自分の親が健康でいてくれることは、それだけで幸福なはずです。しかし、多くの子どもはそれに気がつけず、「親は私のことを理解してくれない」と無いものねだりばかりしてしまいます。
しかし、大人になって親と離れて暮らすようになり、自分も家族を持った時に初めて親の大変さに気がつきますね。もしかしたら、自分の親は友達の親よりも未熟な部分もあったかもしれません。しかし不器用な親であったとしても、とても大切な存在では無いでしょうか。
大人同士が意地を張って、感謝の言葉を言えずに別れの時を迎えるのは悲しいものですね。すでに与えられていることに感謝してそれを伝えることで、とても幸せな気持ちになれるはずです。
毎日の生活の中で与えられている新鮮な空気、健康な体、安全な食べ物、そして温かい布団。自分が当たり前だと思っていることであっても、そこに気がつくだけで幸福を感じることができます。感謝して祈りの時間を持つことによって、自分がすでに持っている幸せを実感しやすくなるでしょう。
アーサナの中での祈り

ヨガのアーサナは、体を健康にするためだけのものではありません。そこに意識をしっかり向けることが大切です。それによって、自分の内側に流れる力強く純粋なエネルギーを感じることができます。
スーリヤ・ナマスカーラ(太陽礼拝)の練習では、太陽に手を合わせて、大きく頭を下げて礼拝し、地面にひれ伏すような動きを行います。これは、単純に太陽に向けておじきをしているだけではありません。私たちが生きるための熱とエネルギーを毎日与えてくれる太陽に感謝しながらも、その大きなエネルギーを自分の内側に取り込んでいく動きです。だから、スーリヤ・ナマスカーラを実践した後には、自分の内側に力強いエネルギーが満ちているのを感じることができるはずです。自分の内側に太陽のエネルギーを感じることができれば、自然と感謝の気持ちが溢れてくる感覚を得られるかもしれません。
また、インドでは体は魂の宿るお寺だと考えます。自分自身という純粋な存在が宿るお寺を毎日清掃し、より快適な場所に整備するアーサナの練習は、それこそが祈りの時間ですね。
ただポーズの形を作るのではなく、そのアーサナを行っている時の内側の変化に意識を向けてみましょう。意識を変えるだけでより多くの恩恵に気がつくことができ、幸せな感謝にもつながります。
自分の内側の神聖さに気がつくプラーナーヤーマ

自分の内側にさらに意識を向けるのが、プラーナーヤーマ(調気法)です。
プラーナーヤーマでは、呼吸法を行いながら自分自身の内側に流れるエネルギー(プラーナ)に意識を集中させます。体の内側を流れるエネルギーは7万2千の気道(ナーディ)を通って、体全体に行き渡ります。自分の内側の広大なスペースを感じることができると、とても穏やかで自由な自分を感じることができます。
自分の内側はとても平和で、静かで、幸福感に満ちています。それに気がつくのがヨガの練習です。日常生活では意識が外に向いているため、自分自身にしっかりと向き合うことができません。しかし、プラーナーヤーマを通して自分の意識を内側に向けることによって、外への意識が絶たれます。その状態をプラティヤハーラ(制感)と呼びます。
自分の見た目や、職業、年齢や性別といった外見上の姿ではなく、本質的な自分に気がつけた時、自分自身の美しさに気がつくことができます。どんな時でも自由な内側の自分への愛おしさを感じることができれば、自分への祈りがわかってきますね。
全ての時間を祈りとして捧げる

ヨガの練習中に自分の内側の神聖さを感じることができたら、徐々にヨガマットの外の時間も祈りとして行うようにしましょう。
食事は、自分自身への捧げ物です。自分を大切にして、自分の内側の本質が喜ぶような食事をしたいですね。また、自宅を掃除することは、お寺を掃除するのと同様の行為です。その場所の清浄さを高めていき、神聖なエネルギーが満ちた空間になることを意識してみましょう。
自宅から一歩外に出ても、意識が変わってきます。
大地を歩く時には地球の力強い生命エネルギーを受け取り、爽やかな風を皮膚で感じ、太陽の光を受け取ります。小鳥の囀りを聞きながら自分以外の純粋な生命を感じることもできますし、緑に生い茂る木々の鮮やかさを見た時にもとても幸福な気分になれることでしょう。
普段であれば気がつけない日常の一コマを意識するだけで、この世界の美しさを感じることができます。何か特別なことがなくても、すでに存在する幸せに気がつけるようになりたいですね。
自分らしい祈りを見つけよう
ヨガは、国や時代、文化に関わらず、誰もが実践できるものです。
祈りというと、どうしても特定の信仰をイメージしてしまいがちですが、自分の感じる全てに対して祈りを向けても良いのではないでしょうか。
美しい朝焼けを見た時、呼吸で美しいエネルギーを取り入れた時、純粋な水の甘みを感じた時、自分の内側の平和に気がついた時……
世界のあらゆる事柄に意識を向けることができれば、それが自然と感謝や愛といった純粋な気持ちに繋がってくるはずです。そこから、汚れのない祈りの心が生まれてくるはずです。








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